People

  • TOP
  • People
  • 佐藤彰子 – 漁と食卓をつなぐ料理研究家

佐藤彰子 – 漁と食卓をつなぐ料理研究家

の現場と食卓のつなぎ役になりたい。そんな思いで「姫島魚さばき教室」の企画をスタートし、その後も「糸島子ども料理教室」「糸島収穫料理教室」など精力的に活動する料理研究家の佐藤彰子(しょうこ)さん。胸の中にはいつも糸島市姫島の漁師だった祖父への尊敬の念があり、勇気や力になっているようです。

なぜ、料理研究家になったのですか?

もともとは「食いしん坊」という動機なんです(笑)。栄養関係の大学に進学し、卒業後は料理講師になりました。でもある時期、オーバーワークや人間関係に悩んで仕事を続けることができなくなってしまいました…。周りに迷惑をかけるように突然、料理の仕事から離れてしまったことがあるんです。

「もう2度と料理したくない!」というくらい心がボロボロでした。ちょうど29歳の頃です。同じ頃、姫島で暮らす祖父が病気で自宅療養することになり、私は看病のために姫島に渡りました。亡くなる直前まで塩ワカメを作ったり、ウニやアワビをとり、生涯現役漁師を貫いた祖父と一緒に暮らすことができました。

Sato Shoko, 佐藤彰子 - 漁と食卓をつなぐ料理研究家

最後の一カ月は大変でしたが、振り返ってあらためて気付いたんです。目の前の美しい海で祖父が魚をとり、それを祖母と料理して3人で食卓を囲んでいた日々がどれだけ贅沢だったのか、を。幼い頃から少しでも時間があれば姫島に行くくらい、祖父母との時間は私にとって心の栄養でした。結果的に、その幸福感が私をもう一度料理の道に向かわせてくれました。「漁師の孫として、この豊さを次世代に伝えたい。漁の現場と食卓をつなぐ役割になりたい」という思いが明確になりました。

Sato Shoko, 佐藤彰子 - 漁と食卓をつなぐ料理研究家

起業して7年。振り返ってどうですか?

あっという間!当然、最初は仕事がないので、自分で「姫島魚さばき教室」を始めました。船で島に来てもらって、漁村の様子を含めて体験してもらう企画です。最近は子どもたちの参加が増えました。魚を食べなかった子でも、自分で料理することで魚好きになることもあるんですよ!

そして、ずっとあたためていた企画「放課後の子ども料理教室」は、2年前に実現することができました。小学校に隣接したコミュニティセンターを使うので、学校帰りに料理して、作った料理は家に持ち帰って夕食の一品にしてもらいます。

Sato Shoko, 佐藤彰子 - 漁と食卓をつなぐ料理研究家

糸島生まれ、糸島育ち。故郷はどんな印象でしたか?

子どもの頃は地元で取れる食材や自然の豊かさは「あって当たり前」。特に何も感じずに育ちました。進学後は福岡市内の高校まで通っていましたが、「糸島弁って周りと違うな」「糸島ってちょっと田舎だな」って思った記憶があります(笑)。

Sato Shoko, 佐藤彰子 - 漁と食卓をつなぐ料理研究家

それが「あれ!?」って思ったのが、料理講師をしていた10数年前だったかな。「糸島っていいところですね!」と人に言われることが増えたんです。糸島ブランドが全国的に認知され、うなぎ上りの評価にこちらがびっくりしたことを覚えています。

今、私が糸島の料理研究家として仕事ができるのも、より良いものを世代を超えて追求してきた生産者のおかげです。本当にありがたく感じています。

漁の現場を担う人たちとの交流を大事にしていますよね。

糸島には、地魚の価値を高めようと奮闘している漁師さんや漁協関係者、飲食店や販売業の方々がいます。その仲間と一緒に仕事できる環境がとても楽しいです。その交流を通じて、漁の現場で何が起きているか、にアンテナを立てるようにしています。

「糸島の魚いいよね」とよく言われますが、漁師の暮らしが厳しいことは事実です。漁獲高や魚種の減少、魚を食べる人の減少。今、売り場にある魚が5年後もあるかどうか分からないんです。糸島の豊さを次世代に手渡せるよう、料理を通して少しでも力になりたいと意識しています。

Sato Shoko, 佐藤彰子 - 漁と食卓をつなぐ料理研究家

これからの夢は?

好きな言葉は、元プロ野球監督の野村克也さんの座右の銘「金を残すは三流、仕事を残すは二流、人を残すは一流」。祖父の背中を見て、自分の使命にたどり着きましたから、同じように、私が関わる子どもたちの誰かが、故郷や海を大切にする生き方を選んでくれたら最高だな、と妄想しています。ただ、子どもたちがプレッシャーに感じないよう、普段は口にしません(笑)。

Sato Shoko, 佐藤彰子 - 漁と食卓をつなぐ料理研究家

おじいちゃんへの思いがいつも胸にあるのですね。

不思議ですけど、いつも見守ってくれている気がします。だから、いろいろなことにチャレンジしてもうまくいくって自信があります。私は料理を通して、これからの人たちを育てていきたい。食材の向こう側を見る力、うまくいかないことを乗り越える力、伝えられることはいっぱいある気がします。それが巡り巡って故郷や祖父への恩返しになるかもしれませんよね。だから、私は生涯現役で料理教室を続けたいです!

>> 糸島子ども料理教室

Sato Shoko, 佐藤彰子 - 漁と食卓をつなぐ料理研究家

Writer‘s comment

糸島市の東風コミュニティーセンターで開かれていた「糸島子ども料理教室」を訪ねました。この日のメイン料理は「海鮮ちり」。ワイワイ賑やかな子どもたちを、よく通る明るい声で手際よくガイドする佐藤さん。大家族のお母ちゃんみたいで「子どもが好き」という思いがにじみ出ていました。彰子さんがおばあちゃんになっても、料理教室でたくさんの子どもたちに囲まれている姿が、ばっちり目に浮かびました。

Interview & text by Leyla / Photography by Seiji Watanabe / Edited by: Emiko Szasz

Category
Itoshima City - 糸島市
Published: Aug 2, 2023 / Last Updated: Aug 4, 2023

ページトップに戻る