People

  • TOP
  • People
  • 松﨑治久 – 糸島の農を生かす挑戦者

松﨑治久 – 糸島の農を生かす挑戦者

る人の心を潤す広大な農の風景。株式会社百笑屋は、糸島市二丈地区にある延べ80haを超える田畑で米・麦・大豆を手がけています。「地域資源を循環させる農を追求したい。どんどんやりたいことが湧いてくる」と果敢なチャレンジを続ける代表取締役の松﨑治久さん。この地で生まれ育った彼に話を聞いてみました。

Cultivating the Future: Haruhisa Matsuzaki on Farming, Family, and Sustainability / 松﨑治久 - 糸島の農を生かす挑戦者

なぜ、家業の農業を継いだのですか?

シンプルに楽しかったからです。最初の記憶は保育園に行く前のこと。当時はよくミカン山の作業に親子で弁当持参で行ってました。気分は毎日ピクニック!父親が運転する「ポンポン車」と呼んでいた小さなトラックの後ろに乗るのが好きでした。
小学校2年生で大型パワーショベルを操縦させてもらったり、小学5年生でトラクターの運転を手伝ったり、機械好きにはたまらない環境だったんです。「信州でスノボ三昧の学生生活もいいな」と夢見た時期もあったけれど(笑)、結局農業大学に進んで就農しました。

Cultivating the Future: Haruhisa Matsuzaki on Farming, Family, and Sustainability / 松﨑治久 - 糸島の農を生かす挑戦者

やりがいは何ですか?

「期待以上のことをしてやろう」ってマインドが子どもの頃からあります。父親の出張時には、大豆の手入れなどを頼まれていたのですが、「言われた以上のことをしよう」と、張り切るタイプでした。「自分でやりたい」というマインドも常にあります。自動車整備とか少しずつ覚えてきたので、今は大型農業機械のタイヤ交換や板金塗装など、農業周りの大半のことは自分でやります。

Cultivating the Future: Haruhisa Matsuzaki on Farming, Family, and Sustainability / 松﨑治久 - 糸島の農を生かす挑戦者

自分の代で新たに始めた取り組みは?

「豊かな地域資源、豊かな農業がずっと続くための米作り」という価値提供を目指しています。例えば、竹チップを使った堆肥作り。堆肥は近所の畜産農家からふん尿をいただいて自分たちで作っています。竹チップは、地域の放置竹林を資源として活かすため加えました。
米農家が堆肥舎を持つのは珍しいのですが、地域の畜産農家のふん尿をできるだけ多く受け入れられるよう、堆肥舎を自前で建てました。うちの会社だけ生き残ればいいのではなく、地域全体で、循環のパイプを太くしながら豊かな田畑をずっと繋いでいきたいんです。そんな仕組みをつくる方法をずっと試行錯誤しています。

Cultivating the Future: Haruhisa Matsuzaki on Farming, Family, and Sustainability / 松﨑治久 - 糸島の農を生かす挑戦者

これまでに影響を受けた人は?

刺激し合える仲間はたくさんいますが、1人挙げるなら元九州大学農学部教員の佐藤剛史さん。生産者以外の人が農に何を求めているか、マーケティング視点で考える発想が新鮮でした。僕も新しいことを農業に持ち込んでいたつもりだったけど、「いかに作業を楽にするか」という視点だったと気付かされました。その発想を取り入れたイベントが、参加者が収穫した枝豆を畑のど真ん中でゆでて食べる「ビアファーム」。多い時は1,000人超に来場いただき、食べる人と現場でつながる価値を体感しました。

最大のピンチは?

就農17年目ですけど、毎年何かしらピンチがある気がします(笑)。そういえば、ビアファーム立ち上げの頃はイベントまでに枝豆が太るか、プレッシャーで眠れない夜が続きました。慣れるまでの数年間は、半端ない緊張感に襲われていました。

これからの夢は?

百笑屋の米作りをのれん分けすること。今、米価の相場は安すぎます。だから米作りを辞める農家が多いんです。うちは循環型農業の価値を発信しながら60kg24,000円くらいで直売しています。この価格だと翌年も米作りを続けられるんです。糸島の米作りを崩したくないから「うちもやりたいな」と思ってくれる農家にノウハウを渡せたらいいなと考えています。それから、もう一つ夢があるんです。実は、サラブレッドを飼いたいなと思ってて。馬に乗って田んぼの見回り、いいですよね〜。本気でリサーチ中です(笑)!

Cultivating the Future: Haruhisa Matsuzaki on Farming, Family, and Sustainability / 松﨑治久 - 糸島の農を生かす挑戦者

最後の質問。どんな子育てをしてますか?

4人子どもがいますが、僕の子ども時代とほぼ同じ環境です。遊ぶのは外。地域を五感で楽しんでほしいから、ここは徹底しています。僕自身、記憶の中に心地いい古里の感覚がたくさんあります。木から落ちてちょっと打ったとか、そういうのもいい思い出なんです。そんな心地いい地域を次世代につなぐためにも、循環型農業を広めたい。自分の代で大成功を狙うのではなく、代々が恩送りを続ける中の『中継ぎ投手』みたいな感覚です。子どものために、子どもは孫のために、ずっと恩送りできたらいいなと思います。

>> 株式会社百笑屋について

Cultivating the Future: Haruhisa Matsuzaki on Farming, Family, and Sustainability / 松﨑治久 - 糸島の農を生かす挑戦者

Writer‘s comment

「長女が1歳のころかな。田んぼですぐ葉っぱとか土とか口に入れる様子を見て、嫁が言ったんです。『農薬使ってなくて良かった』って。『あ、そうだよな』ってハッとしました」。
これが「我が子に食べさせたいモノをお客さまに!」百笑屋のキャッチコピーの誕生秘話。食べる人を大切にする作り手を、食べる側も買い支える。私たちにできる具体的な一歩だと思いました。

Interview & text by Leyla / Photography by Seiji Watanabe / Edited by: Emiko Szasz

Category
Nijo - 二丈エリア
Published: Jun 22, 2023 / Last Updated: Jun 22, 2023

ページトップに戻る