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馬場孝志 – 糸島の人たちが潤う「糸島の地域商社」を目指して

島市に本社工場を置く明太子メーカーの株式会社やますえ。「糸島の価値は、もっともっと上げることができる」と、糸島への愛があふれる馬場孝志社長は熱く語ります。現在、やますえでは、主力である魚介類の加工販売に加え、糸島の漁師や農家から直接買った鮮魚や野菜を全国の飲食店に届けています。そして、糸島産食材をPRする活動にも力を入れ始めました。

やますえ本社工場が糸島にできて、2023年で10年になりますね。

2013年、私が先代から会社の経営を引き継ぐことなったのを機に、本社を福岡市から糸島市に移しました。私は糸島出身で、生まれ育った糸島が好きで仕方ありません。「誰かのための助けになりたい」という心を持っている人が多くて、私自身もいろいろお世話になりました。だから、恩返しの気持ちで、糸島の人たちが潤うような「糸島の地域商社」をつくろうと思いました。

Takashi Baba - Creating a local trading company that enriches the lives of the people of Itoshima, 馬場孝志 – 糸島の人たちが潤う「糸島の地域商社」を目指して

地域商社とはどんなことをするんですか?

糸島を拠点にして10年経ちますが、たくさんのすばらしい農漁業の生産者と知り合いました。その生産者と、全国の飲食店をはじめとする料理のプロとを繋ぐのが、地域商社の役割と思っています。いずれは、やますえの敷地に、糸島の旬の野菜や魚介類を集め、その価値を買い手に伝え、流通させる市場をつくりたいと考えています。2021年11月に糸島食材の加工場兼発送場を本社敷地内につくりました。これは市場を本格的につくるための練習場です。すでに50軒以上の農家や漁師が、毎朝とれたての生鮮産品を届けてくれているので、福岡県内だけでなく、全国の有名ホテルやレストランに糸島の食材を提供できます。

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なぜ、やますえ独自に市場をつくろうと考えているんですか?

漁師は魚を獲るのが得意だし、農家はうまい野菜を育てることはできますが、多くの方は販売は苦手です。選りすぐりの食材も、市場では他の食材の中に埋もれ、安価で買い叩かれていくのが現実です。その流れを変えたいんです。買い手が値段を決めるのではなく、生産者がまっとうな値段をつけて流通できるようにしたいんです。

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やますえ本社の近くには、全国一の産直市場「伊都菜彩」がありますが、そこは生産者が直接エンドユーザーに売る場です。私たちの考える市場は、飲食店向けに糸島産食材を届ける場です。

馬場さんは漁師や農家の生産現場に足を運び、作り手の生の声を大事にしているそうですね?

糸島の食材をPRするためには、実際に生産者の現場をよく知らないといけないと思っています。農作業を手伝ったり、漁を体験したりして、食材の価値を確認しています。同じ海だから同じ味の魚が獲れるわけではないんです。プロの漁師は、うまい魚が獲れる漁場を探したり、魚の締め方にもこだわりをもっています。農家も同様で、同じ地域でも、畑によって野菜の味が全然違うわけです。

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例えば、船越漁港の漁師・藤野一豊さんは、天然真鯛やコウイカなど、すごくうまい魚介類を提供してくれます。そのおいしさの裏側には、漁師さんのものすごい努力があるんです。
漁に同行させてもらったことがあるんですが、夜中の12時頃に出港して帰りが夕方の5、6時。そして、一豊さんは、夜中に起きて「神経締め」という魚の鮮度とおいしさを保つ処置を、一匹ずつ施すんです。体力に自信があった私もさすがにきつかったです。漁師って重労働で大変だと実感しました。

そんな消費者が知らない、おいしさの裏に隠された努力まで伝えることが、糸島の地域商社を目指す我々の役割だと思っています。

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糸島食材の情報発信として、馬場さん自らYouTubeやSNSの動画に出演してアピールしてますよね。

「糸島」の名前を売る前に、個人の名前を売りたいんです。やますえでは、取引先の飲食店に食材を届ける際、この魚はどこの港で誰が獲ったのかを伝票に書いています。例えば「船越漁港 / 千龍丸 / 真鯛2.5キロ」とか。この情報は、必ず料理のメニューに書いてほしいと頼んでいます。

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糸島ブームと言われますが、ブームを陰で支える、真面目に努力している生産者がたくさんいます。彼らに日の目を見て欲しいんです。ただ、私一人では何もできないから、やますえの市場にたくさんの生産者に集ってもらい、みんなの力で50年、100年続く強い糸島ブランドをつくっていきたいんです。

糸島出身で、かつ長年「食」の世界に携わってきた私の使命だと思っています。必ずやり遂げます。

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Writer‘s comment

「糸島ブーム」と言われ、たくさんの飲食店がオープンしています。観光客で行列のできる繁盛店の中には、糸島の食材が使われていないところがあり、糸島在住者として残念に思っていました。馬場さんはそんな現状を憂い、糸島の飲食店に地元食材を使ってもらえるよう働きかけているそうです。「発信力のあるお店に、少しでも地元産を使ってもらえたら、糸島の人たちにメリットがあるじゃないですか。だから私はあきらめない」。こんな経営者が地元にいることを、糸島市民としてうれしく思います。

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Interview & Photos: Seiji Watanabe

Category
Maebaru - 前原エリア
Published: Dec 23, 2022 / Last Updated: Dec 23, 2022

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